
2025年度中に、住宅金融支援機構を通じて “残価設定型住宅ローン”(通称:残クレ型ローン) が発表される見込みとなり、住宅業界に新たな選択肢として注目が集まっています。
これは自動車購入で広く使われている残価設定ローンを住宅ローンに応用したもので、住宅購入の負担感を軽減できる可能性がある仕組みです。
この記事では、この新しい住宅ローン(通称:残クレ型ローン)の仕組み、メリット・デメリット、そして「注文住宅」選びにおけるポイントをまとめます。
■ そもそも「残クレ型住宅ローン」とは?
残クレ型住宅ローンは、「将来的な売却価格(残価)」をあらかじめ設定し、 住宅価格からその残価分を差し引いた額だけを主に返済していく仕組み です。つまり、残価を後回しにすることで 毎月の返済額を抑えることができる 仕組みと言えます。
この背景には、日本の住宅価格の上昇や、従来の「終の住まい」としての住宅観の変化があります。住宅購入が昔よりも大きな負担となっている現代の市場において、住宅を取得しやすくするための仕組みとして国や機構が動き始めています。
また、国土交通省は 銀行向けに保険制度を整備し、将来的な住宅価格の下落リスクをカバーする方針 との報道もあり、金融機関としても提供しやすい環境づくりが進んでいくようです。
■ 残クレ型住宅ローンのメリット
① 月々の返済負担を抑えられる
最大のメリットは、何と言っても 月々の返済額が軽くなる点 です。たとえば5,000万円の住宅でも、設定した残価分を差し引いて返済するため、従来の住宅ローンに比べて大幅に毎月の負担を軽くできます。これは住宅取得のハードルを下げる大きな効果が期待できます。
浮いたキャッシュフローは教育費や老後の資金形成、生活費に回すなど、家計の柔軟性を高める効果も考えられます。
② 住み替えや人生設計との親和性
残クレ型は、住宅を「住み続ける資産」と同時に「将来の売却を視野に入れた選択肢」として考える人に向いています。たとえば、
- 転勤や介護などで住まい計画が変わる可能性がある
といった人生設計がある場合、あらかじめ残価を設定しておくことで住み替えしやすいローン設計にすることもできます。
■ 注意したいデメリット/リスク
① 住宅所有の実感と「終の棲家」の問題
残クレ型は住宅ローンの名義者が亡くなった場合「住宅の売却」を前提にしたローンです。そのため、例えば、お子さんが家に住み続けたくともできない場合などが想定されます。住宅は生活の基盤です。住宅ローンを選択するタイミングで35年以降のイメージまで持てるかどうか。。悩ましい問題です。
70歳以上まで住宅の返済が続く場合は、リバース60のようにローン金利のみの支払いに仕組みが切り替わるようです。詳しい仕組みは、今後の発表が待たれます。
② 住宅価格の下落リスク
将来の「残価」を前提に返済を進めますが、 その残価が想定よりも下回った場合のリスク は完全に無くなるわけではありません。特に、
- 周辺環境の変化
- 立地価値の低下
- 建物の劣化や需要の変動
などが起きた場合、 売却価格が設定した残価を下回る可能性があります。
この場合を想定して、金融機関向けの保険制度を整備する方針を示しています。
③ 死亡時の住まいの行方
従来のフラット35や民間ローンでは、 団体信用生命保険(団信) でローン残高がゼロになる保証が一般的です。
これに対し残クレ型は、「死亡時の売却」を前提にして返済額を軽減しているため、 ローン契約者が亡くなった場合、その住宅に住み続けられるかどうかは単純ではありません。
少なくともファミリー世帯で家を計画する場合はペアローンで組むことをオススメします。
ローン設定者が亡くなった場合は家を手放す前提であるがゆえに、残された家族の生活設計への影響を十分に検討する必要があります。
■ 長期優良住宅や高性能住宅との相性がいい
高品質な住宅、例えば 長期優良住宅や高断熱・高性能住宅 といった価値が長く保たれる住宅は、 残クレ型ローンとの相性が比較的良い可能性 もあります。というのも、
- 資産価値が下がりにくい
- 将来的な売却時に評価されやすい
- 長く安心して住むことができる品質
といった特性が、残価を維持しやすい要素となるからです。こうした当社がご提案するような高性能住宅を選ぶことで、残クレのメリットを最大限に引き出せる可能性があります。
■ まとめ:選択肢が増える喜びと慎重な検討の必要性
残クレ型住宅ローンの登場は、新築住宅購入の新たな選択肢として喜ばしいニュースです。注文住宅の家づくりにおいて、月々の返済負担を抑える仕組みは魅力あるものはないでしょうか。
しかしながら、
- 住宅は生活基盤であり単なる消費財ではない
- 資産価値の変動リスクをどう捉えるか
- 将来設計に合うローン設計かどうか
といった点は、 お客様ご自身のライフプランや価値観によって判断が大きく変わる部分です。
残クレ型住宅ローンの商品詳細が発表された際には、私自身も勉強し、お客様にとって最適な選択肢をご提案できるよう努めたいと考えています。
設備機器の買い替えや建物修繕管理は誰が費用負担?、所有権は誰のものになるのか、などが個人的に気になっています。
<出典>
「残クレ」でマイホーム、国が銀行向け保険 新型住宅ローン普及促す/日本経済新聞